札幌家庭裁判所 昭和40年(少)1387号 決定 1965年5月28日
少年 K・S(昭二五・一・四生)
主文
少年を初等少年院に送致する。
理由
非行事実
少年は、中学在学中から学業を嫌つて不良交友を続け、遂には窃盗等の非行を重ね、昭和三九年七月、学業(中学三年在学中)を放棄して家出するに至つた為、同年一二月二四日当家庭裁判所岩見沢支部に於て保護観察決定をうけ以後、更生の道を辿つていたものであるが、翌四〇年四月○○日実兄Mの知人であるA(当一七年)から一時間で百万円位になる仕事があると誘れて之に加る事とし、翌△△日、同人から○坂○志(三二年)に引合されて、右○坂から列車強盗に付ての詳細綿密な説明を受け、茲に少年は右両名と共謀の上、右○坂の計画通り同月××日列車強盗を行う事とし、翌□□日更に細目の打合せをし翌××日午前一一時頃集合して時間待をした上右Aに於て右○坂が用意していた刃渡り約一三、五センチメートルのサバサキ庖丁、懐中電灯、包装用紙、紐、ビニール製バッグ、バッグ等を受取り、右Aと共に同日午後七時四二分、国鉄岩見沢駅発の釧路始発函館行第四二〇号普通列車に乗込み、右列車が午後八時二〇分頃国鉄野幌駅到着の際一輌目の荷物車に八時二五分頃、野幌、厚別間を進行中二輌目の荷物車に至り、右Aに於て乗務中の車掌○永○雄(三九年)に対し、所携のサバサキ庖丁をつきつけて、「騒ぐな」と申向けて脅迫しその反抗を抑圧し所携の紙紐で両手を後手に縛り上げて便所内に押し込み、次で同車を見廻りに来た車掌○○谷○男(四四年)に対しても前同様右サバサキ庖丁をつきつけ「騒ぐと殺すぞ」と申し向けて脅迫し、その反抗を抑圧した上、三輌目の荷物車に連行し更に居合せた車掌柴○久(三三年)に対しても前同様右サバサキ庖丁をつきつけ、「騒ぐと殺すぞ」と申向けて脅迫し、その反抗を抑圧し右両名を所携の紙紐で後手に縛り上げて看視し、少年に於て同車備付の金庫を開き、輸送中の株式会社○○○○○銀行所有の現金二、二九〇万円を強取したものである。
適条
刑法二三六条一項、六〇条
要保護性
少年は小学校時代から劣等観が強く、不良交友、窃盗等の非行を重ねてきたものであつて、その劣悪な家庭環境-即ち、父の酒乱気味で粗野、横暴な性格、実兄Mの非行化等と相まつて、一層その傾向を強めたものであり、その性格も即行性、気分易変性、自己顕示性等の偏倚が著しく為に、更生途上にあり乍ら、共犯者Aの誘に乗り何ら反省する事なく本件非行に及んだものと認められる。
一方少年の家庭は、前段記載の通り崩壊家庭の様相を呈しており保護能力は皆無に等しく且少年自身、義務教育も終了しておらず、思考内容、生活態度にも問題があるので、事案の重大さ満一六歳に満たない年少者である等の事情を考慮し、収容によつて義務教育の履修、性格の矯正を計るのを相当と認め、少年法第二四条一項三号を適用して主文の通り決定する。
(裁判官 今富滋)
参考一 少年調査票<省略>
参考二 鑑別結果通知書<省略>